SBI・Vシリーズは米国ETFへ投資し、この米国ETFとパフォーマンスも連動する投資信託である。
日本の証券会社ではSBI・Vシリーズだけでなく、投資先になる米国ETF(VOO、VTI、VYM)も直接購入できる。
SBI・Vシリーズ(投資信託)とSBI・Vシリーズの投資先になる米国ETF(VOO、VTI、VYM)の違いは主に
1.保有でかかる手数料
2.分配金の有無
3.取引手数料
4.為替コスト
5.購入できる証券会社
の5点になる。まとめて比較すると下記のようになる。
SBI・Vシリーズ | 米国ETF(VOO、VTI、VYM) | |
---|---|---|
保有でかかる手数料 | SBI・V・S&P500:年0.0938%程度 SBI・V・全米株式:年0.0938%程度 SBI・V・米国高配当株式:年0.1238%程度 | VOO:年0.03%程度 VTI:年0.03%程度 VYM:年0.06%程度 |
分配金 | 2021年6月まで実績無し | 2021年まで年4回の分配金実績 |
取引(売買)手数料 | 無料 | SBI証券の場合、VOOとVTIは買付手数料が無料。NISA口座ならVOO、VTI、VYMの買付手数料が無料。ただし、売却手数料として0ドルから22ドルがかかる。 |
為替コスト | 無料 | SBI証券では1ドルあたり25銭(0.25円)の手数料。住信SBIネット銀行では1ドルあたり4銭(0.04円)の手数料。 |
購入できる証券会社 | SBI・V・S&P500:SBI証券を含む6社 SBI・V・全米株式:SBI証券のみ SBI・V・米国高配当株式:SBI証券のみ | 多数の日本国内における証券会社で購入できる |
2021年6月現在(go.sbisec.co.jp、investor.vanguard.com、rakuten-sec.co.jp、site2.sbisec.co.jpより)
米国ETFと比較した「SBI・Vシリーズの優れた点」としては取引(売買)手数料、為替コストが無料の点が上げられる。100円以上1円単位でも売買できるため、少額で頻繁に取引したい人にもおすすめである。
SBI・Vシリーズと比較した「米国ETF(VOO、VTI、VYM)の優れた点」としては保有でかかる手数料(経費率)が安い点が上げられる。
つまり、少額で頻繁に取引をしたい人には「SBI・Vシリーズ」、一度の取引金額が大きく、取引回数が少ない人には「米国ETF(VOO、VTI、VYM)」がおすすめである。
NISA枠を購入の目安にしてSBI・Vシリーズと米国ETF(VOO、VTI、VYM)を買い分けても良いだろう(後述)。
SBI・Vシリーズをすべて購入できるのはSBI証券のみとなっている(2021年6月現在)。SBI・Vシリーズを購入したい人はもちろん、投資先になる米国ETF(VOO、VTI、VYM)の購入もSBI証券の利用がおすすめである。SBI証券は取引手数料、為替コストなどの点で他の証券会社よりも安く米国ETFの取引ができるからだ。
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この記事ではSBI・Vシリーズ(投資信託)と投資対象の米国ETFを比較するために
▶ SBI・Vシリーズと投資先になる米国ETF(VOO、VTI、VYM)の比較
から
▶ SBI証券で米国ETFを購入する際にかかる手数料
▶ SBI・Vシリーズ(投資信託)と投資対象の米国ETF、どちらを購入すべきか?
までくわしく述べていきたいと思う。
SBI・Vシリーズと投資先になる米国ETF(VOO、VTI、VYM)の比較
SBI・V・S&P500は「VOO(バンガードS&P500 ETF)」、SBI・V・全米株式は「VTI(バンガードトータルストックマーケットETF)」、SBI・V・米国高配当株式は「VYM(バンガード 米国高配当株式ETF)」を実質的な投資先としている。
SBI・V・S&P500 ⇒ VOOへ投資
SBI・V・全米株式 ⇒ VTIへ投資
SBI・V・米国高配当株式 ⇒ VYMへ投資
2021年6月現在における
1.保有でかかる手数料
2.分配金の有無
3.取引手数料
4.為替コスト
5.購入できる証券会社
でSBI・Vシリーズと投資先米国ETF(VOO、VTI、VYM)を下記で順番にくわしく比較していく。
1.保有でかかる手数料
保有でかかる主な手数料としてSBI・Vシリーズ(投資信託)には信託報酬、米国ETFには経費率がある。信託報酬と経費率はいずれも同じような性質の手数料であり、1年間に少しずつ取られている。
2021年6月現在、SBI・Vシリーズの信託報酬は「SBI・V・S&P500」が「年0.0938%程度(税込)」、「SBI・V・全米株式」が「年0.0938%程度(税込)」、「SBI・V・米国高配当株式」が「年0.1238%程度(税込)」になる。投資信託の信託報酬に相当する米国ETFの経費率はVOOで年0.03%程度、VTIで年0.03%程度、VYMで年0.06%程度になっている。
SBI・V・S&P500 ⇒ 年0.0938%程度(税込)
SBI・V・全米株式 ⇒ 年0.0938%程度(税込)
SBI・V・米国高配当株式 ⇒ 年0.1238%程度(税込)
VOO ⇒ 年0.03%程度
VTI ⇒ 年0.03%程度
VYM ⇒ 年0.06%程度
具体的には、100万円分のSBI・V・S&P500を保有すると、年0.0938%程度の手数料なので938円が1年間に取られる手数料となる。VOOはさらに低い年0.03%程度の手数料なので、300円が1年間に取られる手数料となる(ちなみに、米国ETFはドル建てなので、実際にはドル換算)。つまり、SBI・Vシリーズは投資先の米国ETFよりも0.06%以上保有による手数料が高くなっている。
ただし、SBI証券では投資信託を保有することによる還元サービス(SBI投信マイレージサービス)がある。SBI・V・S&P500は年率0.0242%の分のTポイントが毎月付与される。100万円分を保有すると1年で242ポイントの付与である。したがって、実質的な手数料は年0.0696%となる。
「SBI・V・全米株式」と「SBI・V・米国高配当株式」は2021年6月から申し込みが始まったばかりなのでSBI投信マイレージサービスによる還元率は決まっていない。おそらく「SBI・V・S&P500」と同率の年率0.0242%になると思われる。
2.分配金の有無
米国ETF(VOO、VTI、VYM)はいずれも毎年4回の分配金を配ってきた(2021年までの実績)。2017年3月から2021年3月まで、1株あたりの分配金実績をまとめると下記のようになる。
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | |
---|---|---|---|---|---|
VOOの分配金 | 4.3679ドル | 4.7367ドル | 5.5709ドル | 5.3027ドル | 1.2625ドル |
VTIの分配金 | 2.343ドル | 2.6046ドル | 2.9047ドル | 2.7694ドル | 0.6716ドル |
VYMの分配金 | 2.4011ドル | 2.6492ドル | 2.8418ドル | 2.9061ドル | 0.6564ドル |
2017年から2020年は4回分の合計。2021年は3月(1回分)の金額になる(investor.vanguard.comより)。
2021年6月現在の価格はVOO1株385.83ドル、VTI1株218.18ドル、VYM1株107.80ドルとなっている。したがって、分配金の利回りだとVYMがもっとも高く、年2%から3%となっている。
SBI・Vシリーズのうちすでに販売されている「SBI・V・S&P500」では分配金の実績はない。
「SBI・V・S&P500(旧:SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド)」はVOOへ投資している。SBI・V・S&P500ではVOOから受け取る分配金が自動的に再投資へ回されるため、保有しても分配金は受け取れなかった。2021年6月にスタートする「SBI・V・全米株式」や「SBI・V・米国高配当株式インデックス・ファンド」も分配金再投資専用の投資信託になると思われる。
分配金の有無で投資先を決めるべきでない理由
SBI・Vシリーズだけでなく、日本の投資信託の多くは分配金をもらえない。分配金を不労所得のように受け取るため、米国ETFへ投資する人は多い。しかし、分配金は現金として受け取らず、再投資に回してくれた方がメリットは大きい。なぜなら、分配金の再投資により投資信託の評価益が増えてもこれには課税されないからだ。元本で含み損が生じてる場合でも、分配金を受け取れば税金が課せられてしまう。つまり、分配金に課税され、さらには売却で損するといったケースが米国ETFでは生じうる。
また、SBI・Vシリーズだけでなく、楽天バンガードファンドも購入手数料・解約(売却)手数料は無料になっている。くわえて、投資信託の多くは100円以上1円単位での売却もできる。つまり、100円ずつ、手数料を取られずに売却もできる。米国ETFのような分配金を投資信託で受け取りたいなら、少額ずつ売却すれば分配金の代用ができるのだ。購入・売却での手数料がないため少額で頻繁に売買できる点も投資信託のメリットになる。分配金の有無で投資先を決める必要はないだろう。
投資信託の保有で分配金がほしいなら「投資信託の売却」と「楽天証券における保有」で作り出すべきだ。さらに、くわしくは下記記事も参考に。

3.取引手数料
SBI・Vシリーズは取引(売買)手数料が無料。投資信託は100円以上1円単位で、頻繁に取引をしても手数料はかからない。
米国ETF(VOO、VTI、VYM)の取引手数料は証券会社による。VOO、VTI、VYMのうち、VOOとVTIの買付手数料はSBI証券および楽天証券で無料。その他証券会社およびVYMもNISA口座で購入すれば買付手数料が無料になる。ただし、売却時にはいずれのケースでも手数料がかかる。
NISAには(一般)NISAとつみたてNISAがある。米国ETFは(一般)NISAでしか買えないので注意しよう。SBI・VシリーズはSBI証券の(一般)NISA、つみたてNISAいずれでも購入できる。
米国ETFの取引手数料はSBI証券、楽天証券、マネックス証券が0.495%(税込)と同一で最安値圏にある。
4.為替コスト
SBI・Vシリーズは円建てなので、そもそも円からの両替が不要である。したがって、為替コストは無料になる。ただし、投資先が米国ETFになるため、為替レートにより評価額は変化する。たとえば、円高になると評価額は下がり、逆に、円安になると評価額は上がる。
米国ETF(VOO、VTI、VYM)はドル建てなので、買付で必要な円からドルへの両替で為替コストがかかる。SBI証券や楽天証券など、ネット証券でのドル買付では1ドルあたり25銭(0.25円)の為替コストがかかる。
5.購入できる証券会社
米国ETF(VOO、VTI、VYM)は複数の証券会社で購入できる。
2021年6月現在、SBI・Vシリーズのうち「SBI・V・全米株式」「SBI・V・米国高配当株式」はSBI証券でしか買えない。
「SBI・V・S&P500(旧:SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド)」は
・SBI証券
のほかにも
・マネックス証券
・岡三オンライン証券
・auカブコム証券
・佐賀銀行
・SMBC日興証券
など6つの証券会社で購入できる(SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンド月次レポートより)。
ただし、SBI・Vシリーズは2021年6月から申し込みが始まった新しい投資信託であり、今後は購入できる証券会社も増えていくだろう。
SBI証券で米国ETFを取引(売買)・保有する際にかかる手数料
SBI・Vシリーズはもちろん、多くの投資信託は信託報酬が実質的な手数料となっている。
米国ETFは取引(売買)でかかる手数料として取引(売買)手数料、為替コスト、保有でかかる手数料(経費率)がある。米国ETFでかかる手数料をまとめると下記のようになる。
米国株ETF(VOO、VTI、VYM) | SBI証券で購入・保有した場合 |
---|---|
買付手数料 | VOO、VTIは無料。VYMは約定代金の0.495%(税込)。最低手数料は0ドル、上限手数料は22ドル(税込)。また、NISA口座での購入ならVOO、VTI、VYMいずれの買付手数料も無料。 |
売却手数料 | 約定代金の0.495%(税込)。最低手数料は0ドル、上限手数料は22ドル(税込) |
為替コスト | 1ドルあたり25銭(0.25円)がかかる。100ドル分(約1万1000円)の両替をすると25円の手数料がかかる。また、SBI証券では住信SBIネット銀行で買い付けたドルでの買付もできる。住信SBIネット銀行では1ドルあたり4銭(0.04円) |
保有でかかる手数料(経費率など) | VOO:年0.03%程度 VTI:年0.03%程度 VYM:年0.06%程度 |
2021年6月現在の約定代金に対する取引手数料(SBI証券におけるインターネット注文の場合。site2.sbisec.co.jpより)
SBI証券では約定代金の0.495%(税込)が米国ETFの「取引」手数料になる。つまり、買付と売却それぞれで手数料がかかる。ただし、最低手数料0ドル、上限手数料は22ドル(税込)と決まっている。約定代金が2.02ドル以下の場合は手数料が無料になり、約定代金が4444.45ドル以上の場合は一律22ドル(税込)の手数料になる。くわえて、上でも述べたように、SBI証券ではVOOとVTIの「買付」手数料が無料、NISA口座ならVOO、VTI、VYMいずれの買付手数料も無料である。
最低手数料と上限手数料はあるものの、基本的に、VOO、VTI、VYMの「売却」では手数料として0.495%(税込)を取られる。たとえば、1000ドル分を売却する場合、手数料として4.95ドル(約550円)かかる。
米国ETF(VOO、VTI、VYM)はドル建てなので、買付で必要な円からドルへの両替では為替コストがかかる。たとえば、SBI証券でのドル買付は1ドルあたり25銭(0.25円)がかかる。つまり、100ドル分(約1万1000円)の両替をすると25円の手数料がかかる。
ただし、SBI証券では住信SBIネット銀行で買い付けたドルでの買付もできる。住信SBIネット銀行では1ドルあたり4銭(0.04円)とさらに安い手数料でドルの購入ができる(2021年6月現在)。
住信SBIネット銀行からSBI証券へドルを入金するには右上にある「入出金・振替」を選択し、「外貨入金」から簡単に行える。もちろん、住信SBIネット銀行からSBI証券への移動では手数料も取られない。ただし、両方の口座を開設し、連携しておく必要がある。
保有による手数料はどの証券会社で購入してもVOOで年0.03%程度、VTIで年0.03%程度、VYMで年0.06%程度と変わらない。しかし、取引手数料や為替コストを加えれば、米国ETFを買うにもSBI証券がおすすめである。
SBI・Vシリーズ(投資信託)と投資対象の米国ETF、どちらを購入すべきか?
米国ETFと比較した「SBI・Vシリーズの優れた点」としては取引(売買)手数料、為替コストが無料の点が上げられる。くわえて、100円以上1円単位でも売買できるため、少額で頻繁に取引したい人にもおすすめである。
SBI・Vシリーズと比較した「米国ETF(VOO、VTI、VYM)の優れた点」としては保有でかかる手数料(経費率)が安い点が上げられる。ただし、SBI・Vシリーズとは違い取引手数料がかかる。米国ETFの取引手数料はSBI証券で0.495%(税込)。約定代金が4444.45ドル以上の場合は一律22ドル(税込)の手数料になる。したがって、4444.45ドル(約49万円)よりも金額が高くなればなるほど、手数料の割合は低くなる。
つまり、少額で頻繁に取引をしたい人には「SBI・Vシリーズ」、一度の取引金額が大きく、取引回数が少ない人には「米国ETF(VOO、VTI、VYM)」がおすすめである。
ただし、金額が大きくなるとNISA口座での購入もできなくなる。したがって、NISA枠内(年間120万円)では「SBI・Vシリーズ」、NISA枠を越えた分は「米国ETF(VOO、VTI、VYM)」の購入と、NISA枠を目安に買い分けても良いだろう。
上でも述べたように、SBI・Vシリーズ(投資信託)の3つを買うにはSBI証券を利用しなければならない。したがって、「SBI・Vシリーズ(投資信託)」と「米国ETF(VOO、VTI、VYM)」のどちらを買うか迷ってる人でもSBI証券口座は予め開設しておくべきだ。
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楽天ポイントによる還元を得るために、SBI・Vシリーズ代わり、つまり、投資先が同じでパフォーマンスがほとんど変わらない投資信託を楽天証券で購入した人は下記記事を参考に。

米国ETFだけでなく、国内株式や外国株式、投資信託、金・銀・プラチナ、iDeCoについて楽天証券とSBI証券の賢い使い分けについて知りたい人は下記比較記事を参考に。
